2016年3月17日木曜日

飽食の時代のつけ-- 糖尿病患者316万6000人!


 石原結實(医師)著「食べない健康法」(東洋経済出版)によれば、食べなければ体がもたない、などと心配するには及ばない、という。現代の“飽食の日本”を覆う肥満に対する警告であろう。“目から鱗”の、さわりの部分を紹介しょう。重要な健康情報が一杯であり、知っておいて損はない。今日から実践できるものもある。

 表紙の帯にこう書いてある。「食べないと健康に悪い、はもう古い!」「食べないと健康になるが究極の健康習慣」「医師やスポーツ選手が実際にやっている超少食生活の秘訣を紹介!」

 ページをめくると、次のような一文が目に留まった。

  「疫=病気を免れるための力を免疫力といい、血液1m㎥中に4000~8000個(全血液が4~5ℓとすると、数百億個)存在する白血球が、その中心的働きをしている。細菌やウィルスなどの病原体が体内に侵入してくると、マクロファージや好中球が出動して、病原体を貪食・殺菌して処理する。しかし、自分たちの手に負えないほどの敵(病原体)が多かったり、その力が強い場合、マクロファージがヘルパーT細胞に、その旨を知らせる。連絡を受けたヘルパーT細胞は、B細胞の抗体(免疫グロブリン)を作るよう指示すると同時に、キラーT細胞を出動させて病原体を攻撃させる。B細胞から作られた抗体は、ミサイルのごとく、病原体を進撃してやっつける」(58頁)

  同医師は、一般読者に理解しやすいように、別のところで次のように噛み砕いて説明している。

「お腹一杯に飲食すると、食物中の栄養素が胃腸から血液に吸収されて、血液中の栄養状態もよくなる。すると、それを食べた白血球も満腹になり、外からバイ菌やアレルゲンが侵入してきても、体内でガン細胞が発生しても食べようとしない。つまり「免疫力」は落ちるのである。逆に、我々が空腹の時は、血液中の栄養状態も低下し、白血球も十分に栄養を取れず、バイ菌やアレルゲン、ガン細胞を貪食、処理する能力が高まる。つまり免疫力が増強するのである」(3頁)

  なるほど、免疫力が増すといい、落ちるというのはこういうことだったのかと合点した。

  糖尿病の総患者数316万6000人!

  これは、厚生労働省の平成26年患者調査の概況が明らかにした驚きの数字である。

石原医師は、昭和20年代には、日本には数百人しか糖尿病患者がいなかったといい、日本の現在の憂うべき状況に言及し、軽い糖尿病なら「1日2食の石原式基本食」で治るし、中等度以上の糖尿病でも、「1日2食の基本食」で少食の期間を過ごし、慣れた上で、さらに昼を人参・リンゴジュースや生姜紅茶にし、夕食のみ食べるという「1日1食」にすれば、必ず改善すると明言される(22頁)。その具体的食事療法と体験談が巻末に載っている。

  次の動物実験の紹介も衝撃的である。

  「1985年、ニューヨークのマウントサイナイ医大のグロス教授は、ある量の放射線を満腹ネズミに照射したところ100%発ガンしたのに対し、腹5分程度のネズミに同量の放射線を照射しても、わずか0、7%しか発ガンしなかった」(56頁)

 石原医師は、特に下半身の筋力を鍛えることの大切さをいう。下半身を鍛えると一番の利点は転ばなくなることと同医師はいい、筋力を鍛えると体温が上がるという。

  「体温が1度下がると免疫力が30%以上低下し、逆に平熱より1度体温が上昇すると、免疫力は5~6倍になるといわれている」(96頁)

  早速、自分の体温を測ってみると、35度そこそこしかなく余りの低さに驚いた。石原先生のお話からすると、これはまずい、筋力の不足は歴然であった。

  小生、数年前、体重58キロ、胴回り85センチだったが、下腹は膨らんで醜く、自分の体でありながらとても凝視できなかった。

  そこで、石原先生の肝いりで建てられたという伊豆高原のサナトリュウムの体験となった。これまでの人生で、一日食事をしなかったという経験はなかった。ましてや3日間連続の断食など思いもよらなかった。その後、3日間の断食から帰って、スクワットやランニングなど、日常生活に運動を取り入れて数か月経った頃、体重51キロ、胴回り75センチと改善、下腹の出っ張りは完全になくなった。体脂肪率17から一気に12となった。

   しかし、いくら体を鍛えても、肥満を克服しても、アルコール依存だったり、喫煙していたのではダメとしたもの。特に、喫煙は“健康の大敵”であるだけでなく、他者に受動喫煙被害をもたらすという意味で、現代の身近な環境汚染源であることは今や常識であろう(拙著「現代たばこ戦争」(岩波新書)ご参照)

  石原医師の「食べない健康法」は、一読の価値がある本である。