2014年11月21日金曜日

デタラメ解散



   この度の衆議院解散の理由は、全くはっきりしない。小渕優子氏など元閣僚の公選法違反容疑などで、検察の動きが加速しないうちに、“みそぎ”を得てしまおう、というような現政権の思惑があるのではないか、という報道がなされているが、そうだとすれば、余りに姑息である。国民を愚弄するのもいい加減にしてもらいたい。

  翻って、福島第一原発事故による放射能汚染の深刻な問題について、安倍首相は、オリンピック招致の演説で、under control などと国際社会に大嘘をついた。そして、集団的自衛権容認の閣議決定という憲法破壊行為をしながら、「憲法の基本は変えていない」などと国民に虚偽説明をした。

  民意を問うのであれば、原発再稼働の問題こそ、最大の争点と考える。また、集団的自衛権容認の閣議決定の時にこそ、民意を問うべきではなかったのか。いずれも、日本国と日本国民の命運がかかっているからである。

継続的になされている、国会周辺での大規模な原発再稼働反対等のデモを、テロと同視するかのような政権中枢の発言(石破発言)など言語道断である。

この解散は、“デタラメ解散”である。しかし、しかしである。発想の転換をして、民意を突きつける絶好の機会が来た、と捉えればよい。

“この程度の国民に、この程度の政治家”などということのないように心したい。

2014年11月4日火曜日

ある青年への書簡(9年前のひとコマ)


冠省

 過日のお食事会は、楽しいひと時でした。マナーにやや欠けるところがあったとのご趣旨の反省のお手紙をいただきました。

 “マナー”の基本は、貴君も書いておられるように、「相手を尊重する気持ち」、あるいは「相手に対する心遣い」、「相手に対する礼儀」等々いろいろ言い方が違っても、共通していることは、「相手を大切にすること」だと思います。「公共のマナー」ということもあるでしょうから、ここでの相手というのは、必ずしも、特定の相手に限定されないでしょう。それはまた「教養」の範疇に入ると思います。

 教養を身につけるというのは、並大抵のことではできないと思います。特に若いうちに広い学識を身につけるということは、教養のバックボーンにとって大切と思います。そのようにみると、一口に、マナーといっても、そう簡単なことではありません。

 人間関係においては、配慮のなさは時に致命的になることがあります。私たちはいくつになっても、常に謙虚に自己反省を忘れないことが大切と思います。私自身、いつも反省の連続で、いくつになっても完璧などということはないのですね。

 拙著『嫌煙権を考える』(岩波新書)をお読みいただいたとのこと、ありがとう。折角の機会ですから、喫煙問題について考えてみます。

 拙著は、約30年間にわたる反喫煙のボランティア活動を通して、日本の喫煙対策の後れを批判したものです。

 貴君は、「喫煙するかしないかは最終的には個人の自由」とした上で、「自分の体にも周囲の人の体にも悪影響を与えると知った上で吸うのならば、もうそれは他人の口出しすることではありません」というご意見を書いておられます。

 まず前段のところですが、それでは、喫煙問題の根っこのところを理解していただいていないと思いますので、著者としては、正直に言えば、少々不満なのです。

 「超過死亡数」というのはご存知ですか?「喫煙しなければ、死なないですむ」数字のことなのですが、数年前の厚生労働省の正式データで、年間11万4000人という驚くべき数字が報告されています。私と同業者の喫煙者が50代の若さで肺がんのため早死にしたことを書いたものを、拙著と一緒に差し上げたと思います。喫煙は、人の健康や命を奪う毒物なのです。“Tobacco kills.  Don’t be duped” というのは、何年か前のWHOの世界禁煙デーの標語です。「たばこは人殺し、騙されるな!」と訳されています。

 例えば、日本のマイルド・セブンには、「あなたの健康を損なう恐れがありますので、吸いすぎに注意しましょう」と長年表示されてきました(他の銘柄のたばこも同じ)。ところがその同じマイルド・セブンが外国では、「喫煙は肺がんの原因となります」「喫煙は心臓病の原因となります」と表示されて売られてきたのです。この一事をもってしても、日本の消費者には、正しい情報が開示されてこなかった(隠蔽されてきた)ことを示しているとは思いませんか。喫煙し始めるのが、概ね未成年の時ですから、その犯罪性は倍加されるはずです。要するに、このような本質を拙著は暴露しているので、そこのところはしっかり読んでほしいところなのです。

 次に、後段のところですが、「自分の体にも周囲の人の体にも悪影響を与えると知った上で吸うのならば、もうそれは他人の口出しすることではありません」と書いておられます。私は、「周囲の人の体にも悪影響を与えると知った上で吸う」喫煙者に対しては、「口出しできない」どころか、むしろ声を大にして“口出ししなければならない”と思います(但し、その方法論が問題です)。受動喫煙の害は、想像以上の深刻な害を周囲にもたらします。特に赤ちゃんや病弱の人たちに有害なたばこの煙を撒き散らして平気でいる喫煙者に対しては、「煙を撒き散らすな」と訴えるのは当然のことなのではありませんか。そういう意味で、喫煙規制の社会的制度化を求めてきたのが、嫌煙権の市民運動です。このような訴えは、人権の根本的な問題だと私は考えています。拙著『嫌煙権を考える』は、そのことを論じています。

 ところで、先日の選挙の結果をどう考えますか?年金の問題、税金の無駄使いの深刻な状況、役人の天下りのこと、自殺者が年間3万人になっている現実、日本経済が超負債国家になっていて危ない現状、イラクの問題、靖国の本質とアジア諸国の関係等々難問が山積しているのです。いずれ、今度の選挙の結果の付けが大きく国民にのしかかってくるでしょう。“この程度の国民に、この程度の政治家”と言われることがあります。しかし、ものを考えない人々は、この度の選挙結果についても疑問さえ持たないということがあるように思います。実は、大変な時代に突入してしまっていると危惧するのは私だけではないでしょう。

 これからは、貴君たちが日本の社会を背負っていくのです。貴君は、人間的に誠実な青年で、心の広い方とお見受けします。どうぞ自己研鑽を怠らず、今後、専門知識と国際感覚を身につけ、大きく羽ばたいていただきたいと思います。

 貴君の今後の活躍を期待しています。

(貴君に対するこの書簡は、私自身に対する自己反省を込めて書きました)

2014年7月6日日曜日

集団的自衛権行使容認の閣議決定は憲法の破壊である!


安倍政権は、7月1日の臨時閣議で、他国を武力で守ることを認める集団的自衛権の行使を認める“解釈改憲”の決定をなしました。この閣議決定は、憲法9条に違反し、違憲無効であると考えます。

そもそも、自衛のため以外に、他国への攻撃を日本への攻撃とみなして武力行使を認めることが、憲法を改正することなくしてできるなどという憲法解釈は、聞いたことも見たこともありません。

安倍首相は、記者会見で、「従来の憲法解釈の基本的な考え方と変わらない」と述べましたが、この発言は、国民に対する“虚偽説明”と考えます。オリンピック誘致の際、福島の原発事故の放射能汚染に関して、“under control”などと、国際社会に大嘘をついたことは記憶に新しいところです。

集団的自衛権の行使を容認する新たな新3要件の1つは、「わが国と密接な関係のある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」とされています。これに関し、従前の自衛権発動の要件として政権の統一した解釈では、「わが国に対する急迫不正の侵害があること」とされ、「わが国への攻撃があった場合」と明確な基準がありました。しかし、この度の新3要件の1つでは、「明白な危険」というだけで、具体的にどのような場合なのかについて、何の説明もなされていません。要件を満たすかどうかは、時の政権の判断次第ということであり、このような解釈改憲は、時の政治権力の恣意的支配に対抗し権力を制限する立憲主義に反し許されないといわなければなりません。

自民党は、これまで、集団的自衛権について、憲法改正が必要との立場を貫いてきたのであって、解釈改憲で可能などとする意見はなかったはずです(自民党「日本国憲法改正草案」でも、解釈改憲は許されない、という基本的見解に立っています)。

因みに、1980年10月14日、当時の鈴木善幸首相は、「集団的自衛権の行使は、憲法の認めている所ではないと考えている」と答弁しています。また、1994年6月13日、当時の内閣法制局長官の答弁でも、「(国連憲章上の)集団安全保障に関わる措置のうち憲法9条によって禁じられている武力の行使、または武力の威嚇に当たる行為については、我が国としてはこれを行なうことが許されない」と答弁しています。

翻って、憲法98条1項は、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」と明言しています。

因みに、名古屋高裁は、2008年4月17日、「イラクにおいて行われている航空自衛隊の空輸活動は、政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいることが認められる」との憲法判断を下しています。

以上の通り、この度の集団的自衛権行使容認の閣議決定は憲法に違反し、違憲無効であると考えます。